12月の街を飾るイルミネーションが、光と闇のコントラストを際立たせ、
禍の真の影を顕わにする
命を巡る、辛いニュースを眼にするたびに胸が騒ぐ
死の淵に立つものの服をも剥ぐような感覚
口に語れぬ、なにかがある
他者や自己の死とひきかえに、手に入れようとするものはなにか
死にそれぞれがむかうとき、そこには反転した生への希望があるのではないか
日本の公共図書館でも死について語る"Death Cafe"が広がりつつあるようです
幾多の生と死の集積である昔話、
ことしは"Death Cafe"として部屋を開きます
死を照らすことで、そこに浮かびあがる生の誕生を願って
タイムラインでお話を読んでゆきます
マスクを着用しますので、聴こえにくい箇所もあると思いますが、
物語が流れる時間を聴いていただければ幸いです
物語を聴きたい方、休みたい方、どなたでもいらしてください
聴きとれなかった方、興味ある方は出典と、簡単な解説を記しますので
よければ原話、再話を読んで、語ってみてください
◆
唄え メルヒェン
12.25Sat.19:00-21:00
入場無料 入退場自由
路地と人
語り手 原田淳子
◆
19:00 白雪姫
19:20 ふしぎな石のカヌー(チッペワイヤン族,北米)
19:40 美しい娘と魚(ヨルバ族, ナイジュリア)
ブルブル(グジランワラ,パンジャブ)
按司がなし(日本,奄美)
20:30 うそっこ七(日本, 秋田横手市)
20:40 名づけ親になった死神
21:00 星の銀貨
◆出典
◇白雪姫
『語るためのグリム童話 7』ヤーコプ・グリム, ヴィルヘルム・グリム原作;小沢昔ばなし研究所再話
*昔話の語法、モチーフがもっとも典型なお話のひとつ
3回のリズム、白雪姫は3回殺される、命のゆりかごが揺れる
灰かぶりと同じ、そこには死と生のリズムがある
◇ふしぎな石のカヌー
『世界の民話 12 アメリカ大陸Ⅱ』小澤俊夫編訳;ぎょうせい;石井浩子,菅原しずか,藤井めぐみ,米田伴子再話
*死んだ婚約者を追いかけて、若者は死者の国、彼岸の島へゆく美しい物語
神話にもみられるモチーフ
◇美しい娘と魚
『世界の民話7アフリカ』小澤俊夫編訳;ぎょうせい;小室和子,坂根明子,塩飽智子,森谷くみ子再話
*歌で犯罪の真実を訴えるモチーフとしては
グリム47番「杜松の話」、日本の「継子と鳥」、「継子と笛」など
「ブルブル」「按司がなし」も類話と考えられる
◇ブルブル
『世界の民話 19パンジャブ』小沢俊夫編訳;ぎょうせい
*柳田國男的解釈によると「誕生」の「奇端」、「不思議な成長」
鳥は亡くなったものの化身として現われることが多いけれど、
このお話では美しいナイチンゲールが命の変遷を辿る
◇按司がなし
『子どもに贈る昔ばなし, 17』小澤俊夫監修;小澤昔ばなし研究所;
安藤ユキ,海老澤昌子,片山祐吾,木住野正子,高橋尚子,原田淳子,村上はるみ再話
*「ブルブル」と似たモチーフ
アフリカからパンジャブ、日本の奄美へと似たモチーフが少しずつ型を変えて連なってゆく
◇うそっこ七
『民話と文学 秋田・山形の伝承』第三十五号,民話と文学の会;
安藤ユキ,海老澤昌子,片山祐吾,木住野正子,高橋尚子,原田淳子,村上はるみ再話
*死も笑いに変える、笑い噺は日本昔話の真骨頂におもいます
日本のユーモア、逞しさのある話です
◇名づけ親になった死神
『語るためのグリム童話 』ヤーコプ・グリム, ヴィルヘルム・グリム原作;小沢昔ばなし研究所再話
*平等の象徴としての死
米津玄師さんの曲、 『死神』は古典落語の『死神』がモチーフとなっていますが、
落語の『死神』は初代三遊亭圓朝がこのグリム童話の『名づけ親になった死神』から創ったものです
25日には圓朝が聴いた第二版のものを読みます
200年の時を経て、グリムから落語、歌謡曲にその口伝えの形で現れたことはとても感慨深いです
◇星の銀貨
『語るためのグリム童話 7』ヤーコプ・グリム, ヴィルヘルム・グリム原作; 小沢昔ばなし研究所再話
*死そのものではないが、唄え、メルヒェンに込められた願い、そのものの物語であるので、
毎年最後にこのお話を読みます
◆参考文献
『昔話の語法』小澤俊夫著;福音館書店
『グリム童話の誕生 聞くメルヒェンから読むメルヒェンへ』小澤俊夫著;朝日新聞出版
『日本昔話の型』関敬吾著;小澤俊夫補訂;小沢昔ばなし研究所
『国際昔話話型カタログ : アンティ・アールネとスティス・トムソンのシステムに基づく分類と文献目録』
ハンス=イェルク・ウター著 ;加藤耕義訳;小澤昔ばなし研究所
『昔話 その美学と人間像』マックス・リュティ著; 小澤俊夫訳;岩波書店