「白日」津和﨑彰子
2017年 07月 24日
「白日」
津和﨑彰子 個展
会期 2017年8月19日(土)〜26日(土)
時間 19日 19時―21時
20日 11時―21時
21日〜26日 15時―21時
※
8月19日 19時―21時
オープニングイベント|朗読室「 無名 」
参加料:500円(ごはん付き)
※詳しくは、リンク参照。
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津和﨑彰子
1982年福岡生まれ。幼稚園の先生。白ごはんとぶどう味がすきです。
カッチ、カッチ、カッチ
〝 あ、そこ右ね、 〟カッチ、カッチ、、
〝もうウィンカーあげとるじゃん。〟
笑ってる助手席をよそに、ゆっくりハンドルを切る。
お母さんが昨夜、左足をひねった。や、ねじった?
とりあえず痛めたようなので湿布を貼って、ひょこひょこ歩きでやり過ごしていた。
今朝台所に立ってご飯の支度をする後ろ姿に、
しもた、寝過ごした、と思いながら隣に並ぶと、今は痛みが増した感はなく、
けれど、寝る姿勢が一番しんどいらしく、明け方近くになってようやく眠れたくらいだったようで。
朝一番で受診することにした。
改装された病院は明るくて白く、でもって待合室はいっぱいだった。
問診票を書いてから、空いたソファに並んで座る。
窓際の棚には、看護婦さん作かな、折り紙でできた川下りの船と船頭さん、幾重にも広がる大きな花、
どうやってできてるのかわからない複雑そうなコースターみたいなの、とかが並んでいて。
小さめのの水槽にはたくさんメダカがいる。
津和﨑さん、て呼ばれるのはもうちょっとかかりそう。
白い壁紙に白いレースのカーテン、外も同じに晴れてる。
白紙
白雪
だいすき白米
白いTシャツ
かわいい白猫
告白
明白
白雲
白銀、あ、これは他の色入ったからだめね、
またクローゼットに増える白いTシャツ、
乳白、はセーフ?
白玉
白煙
白昼夢、はやだけど
白亜の宮殿はいいなあ、とか。
白い絵が多いなって、思って
展示会の名前は〝白〟を入れようかなあとなんとなく考える。
ガッコン。
病院の玄関入ってすぐ左に自販機がおいてある。
ソファに座った私達の場所からは見えないけど。
そしたら受付に、あの魚釣りする人がよく着てるチョッキ? あれなんて言うんだ、
それ着たおじちゃんが、リアルゴールドのペットボトル片手にやって来た。
なるほど、リアルゴールド。
〝最近オロナミンC飲まんねえ。〟
〝あれリアルゴールドよ。〟
〝おんなじやろ?〟
〝味一緒と思う、うん、てかすきけどもらって飲むくらいよ。〟
〝お母さん、すかん。〟
〝知っとる、おいしいのに。〟
オロナミンCとリアルゴールドの違いをよくわかってない私だけれど、
おじいちゃんおばあちゃんたちは、それらを箱買いしている。のをスーパーでよく見る。
津和﨑さん、
呼ばれてお母さんは、血圧を測ってもらって次はレントゲン室へ。
一人でぼうっと、減っては増える待合室を眺めてる。
ふたつ前の席に杖をついたおばあちゃんとおばちゃん。
親子かなあ、それともおばちゃんはお嫁さんか。
どっちでもいいけど、二人とも慣れた感じでひっついて混んだソファに座る。
おばちゃんの左側におばあちゃん。
私とお母さんも並びたいていそうかもなって思う。
私は立ち位置右慣れしてて、ほかの人といる時もわりとそうかもな。
無意識かな。
そういえばお母さんもともとはどっちが慣れてるんだろう。
そういうの気にしない、というか意識もしてなさそうな気もするけど。
なんでもござれ感あるなあとか。
ふと、私のことはなんでも、や、全部でなくとも、たいがいは、おおよそ知ってるお母さんも
おばあちゃんになったわたしは知らないんだなあと思って。
ちょっとびっくりする。
してると、お母さんがレントゲン室から出てきて、すぐに診察室に呼ばれたので、一緒に入った。
結果、そうね、腫れてもないし、筋肉骨も異常無し、ちょっとした時に足のつき方が悪かったとかやろうねえ、
すこぉしひねったんやろう、三日後木曜に念のため診せにきてね、痛み止めと湿布ば出しとこ! とのことだった。
受付で会計を済ませていると、リアルゴールドおじちゃんが診察を終えたのか、短い廊下の向こうから来る。
その手にはなぜか、ラベルの剥がされた状態のペットボトル。
そうなるともうそれこそどっちかわかんないなと思いながら、お釣りを受け取った。
帰りの車の中で、ホッとして元気が出てきたらしいお母さんが、本当は昨夜布団の中で心配が拡大して、
最終的に複雑骨折まで視野に入れて、というかそうじゃなかろうかと踏んでいたことを白状した。
ちょっとふいた。
木曜日、朝は混むだろうから昼前くらいにと要望あったので(お母さんから)、十一時過ぎに病院へ向かった。
完全に痛みもなくなってどうもないので、行かなくてもいいんじゃないかと控えめにめんどくさがってはいたけれど。
お母さんの読み通り待合室は空いていて、すぐに診察室に通されすぐに出てきて、
一応残りの湿布を貼るよう言われたとの事。きっと貼らないな。
会計待ちしていると、リアルゴールドおじちゃんがリハビリ室から出てきた。
今日もあの魚釣りチョッキを着ているけれど、リアルゴールドじゃない。
どころか、両の手空いたまんま、ソファにどっかりした。
津和﨑さん、
二人で立ち上がって受付に行く背中に、おおきなげっぷが響いた。
たぶん、じゃなくなかった。
すかさず左を見るとすでに目があって、ふきだした。
by rojitohito
| 2017-07-24 21:03
| 2017年終了イベント