300年のヒント
2016年 02月 12日
わたしたちのからだを駆け抜けて、これから少なくとも300年、確かに生きるためのヒントがある。裏返したポケットの隅に溜まった埃のように、それは予期しないタイミングで、それもいちばん尖ったところに現れる。わたしたちのからだが死んだあと、それから、それまで、何万年もの間に生きた数え切れないほどのわたしの聖火リレーが今日に続いているのを忘れないように、ポケットには四つ折りのメモを入れて、今夜、あなたの横顔を照らしに行くためにわたしは走ってる。
詩・土器を制作しているおさないひかりと写真を表現媒体とする川上向子の2名は、2014年に出会い、以後おさないひかりの土器の制作過程を川上が撮影・記録保存しています。
土器は野焼きと呼ばれる窯を使わない原始的な手法によって制作され、一度火が通った土は二度と元の土に戻ることはありません。100年余りでなくなってしまう人の身体と、これから先の気が遠くなるような時間を過ごしていくであろう土器との間で、おさないひかりは「寿命」とは一体何なのか、自分が所有しているはずの「身体」の不確かさに疑問を抱いていきます。
その中で、彼女たちは300年という寿命の仮説を立てます。それは野焼きを撮影した川上の写真や、焼き上がった土器そのものを通して彼女たちが感じた「身体以外の部分」が生きる可能性の最低ラインであり、展示の軸となる「300年のヒント」へと繋がっていきます。
by rojitohito
| 2016-02-12 00:00
| 2016年終了イベント